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【2012.3月号】保険薬局での一部負担金に対するポイント付与は直ちに禁止すべきである

 去る2月10日の中医協は、当初4月実施予定であった保険薬局での調剤一部負担金に対するポイント付与の禁止を、周知および準備の期間を確保するという理由で半年間延期し、10月実施とする方針を決めた。
 この背景には、処方箋調剤を行なっている保険薬局の相当数が、サービスポイントを付与している実態がある。
 そもそも保険医療機関は、「療養担当規則」に基づき、患者に対して収益業務で値引きをすることはもちろん、その他の健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益の提供により、自己の保険医療機関の診療を受けるように患者を誘引してはならない、とされている。
 そこでチェーン薬局等が顧客へのサービスとして行なっているポイント付与については、実質的に一部負担金の減額に当たることから、中医協では明確に禁止する「療養担当規則一部改正案」を決定したものである。
 その決定に基づき、1月10日から1月31日までパブリックコメントを求めた結果、1万3863件の意見が集まり、ポイント付与の禁止を明確にした一部改正案に「反対」する意見が圧倒的多数の1万3008件に上り、「賛成」意見は855件にとどまったと公表された。
 「反対」意見は、「保険薬局の支払いにクレジットカード・電子マネーは禁止しないというのは、整合性がない」、「ポイント付与をしているのは自己負担分なので、医療保険制度上、問題はない」、「ポイントは経済的に助かる、楽しみにしているのでなくさないでほしい」といった、社会保険医療を一般の商業的活動と混同したもので、ポイント付与を実施している側の組織的働きかけがあったのであろうことは容易に想像できる。
 パブリックコメントにこうした「反対」意見が多数寄せられたことを理由に、あるべき禁止が半年間延期になってしまったことは何とも理解しがたいことである。
 よく考えてみると、この反対意見は、混合診療の全面解禁を期待している動きと似ていないであろうか。我が国の優れた社会保険制度を利用して、一儲けを企む市場原理主義者たちの策動の場と重なっていないだろうか。
 医薬分業が薬剤師の専門性を確保し医療の質を高めるものとして国民に定着しつつあるが、一方で本来の姿を歪める市場原理主義に対して、われわれは警鐘を鳴らし続ける必要がある。