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【2013.12月号】特定秘密保護法は国民の利益に反する

 閉会が間近に迫った今臨時国会の焦点は、急がねばならない震災復興や原発汚染水処理問題ではなく、唐突に上程された特定秘密保護法の問題に移ったようだ。
 振り返ってみて、7月の総選挙で自公連立の第二次安倍内閣が誕生した。しかし、このときの選挙公約に「特定秘密保護法」の制定があったのだろうか。その信を国民に説明していたのであろうか。
 この法案上程に至るスピードは、震災復旧のための補正予算成立の時の比ではない。どうみてもいわば「火事場泥棒」的などさくさに紛れて出されたように見える。
 だから審議経過の中で大臣答弁もあいまいになり、法案の成立に支障がないはずの維新の会やみんなの党との修正協議なるものが世論誘導に利用され、あたかも超党派で出されてきたような装いをしている。
 しかしこの法案の内容は重大である。読売や産経を除く大手新聞や地方紙各社が明確にこの法案に反対の社説を掲げているのも、この法案が報道の自由や表現の自由、国民の知る権利の圧殺になることを誰よりも承知しているためであろう。弁護士会はもちろん、学者や文化人たちもこれまでになく政府批判の声を挙げはじめている。
 原発事故の実態はもちろん、原発内部の情報がすべて『特定秘密』保護のもとに置かれる可能性もあり、国民が真実を知ることが困難になる可能性が高い。
 先日行われた保団連の機関紙誌交流会でもこの法案が大きな話題になった。この法案が成立した場合、医療現場にどのような影響が出るのだろうか、との質問に対して、講師を務めたジャーナリストは次のように答えた。
 「この法案は『特定秘密』を洩らしたとして処罰する対象を公務員に限定していません。だから一般の国民も捜査の対象となったり、秘密漏えいの容疑者とされる可能性があります。たとえば患者が『特定秘密』を持った人であった場合、診察室での問診や何気ない会話が『秘密』に抵触していると疑われるかもしれないのです。」
 これまでの審議の中では報道の自由は尊重されるというが、この法案の最大の目的は報道関係者の処罰ではなく、情報源となり得る官僚や公務員を逮捕し処罰するということにある。そのため、報道関係者はもちろん、その家族や医療関係者まで捜査の対象にできるわけである。まさに戦前のような公安警察の強化であり、その組織を握ったその時の権力者である内閣、それに連なる与党政治家や官僚の力が強大になるのである。これが果たして平和憲法を持つ民主主義国家であるといえるであろうか。
 わが国の歴史を見るとき、かつての戦争や原爆の惨禍、あるいは水俣をはじめとした公害、そして福島原発災害など、国家の意向が国民に犠牲を強い、その幸福を奪ってきた歴史にいとまがない。この法案でいったい誰が利益を得るのだろうか、疑問と不信はぬぐえないのである。
 保団連や協会はこの特定秘密保護法の撤回を求める声明を発した。再び戦争当事者への道を歩まないためにも、この法案を墓場に送らなければならない。