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【2014.8月号】地域医療の姿が大きく変えられようとする今こそ医療人の出番

 医療・介護確保総合法が成立したことで、今後の地域医療の姿、枠組みが大きく変わることになった。いわゆる団塊世代が75歳を迎えるという2025年に向けて持続可能な「改革」を進めるというのが理由であるが、具体化はこれから始まることになる。「改革」のおおよその中身は、昨年8月にまとめられた「社会保障国民会議」の報告書が打ち出しているが、今後は官邸内に設置された「社会保障制度改革推進会議」なる11人の有識者会議が先導することになる。 
 さて「改革」の中身を県内に発生することに絞って見てみよう。
 まず、医療圏ごとの上限病床数を決めていた現行の医療計画に替わって「地域医療ビジョン」が策定される。この中では入院・外来・疾患別の患者数の推計を行い、「医療の必要量」を決め、それに応じた二次医療圏ごとの必要病床数を割り出すが、ポイントは今までの一般病床、療養病床の2区分から「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の4区分に分け、それぞれの必要病床数を決めることにある。この際、病院は病床区分の選択を報告する義務を負うが、それを病院ごとにレセプトデータによって検証するという。報告がレセプトデータと対応していないとされると区分変更を求められる。まるで病院は要介護者のような扱いであり、都道府県の医療審議会との協議が課せられ、病床区分の変更を受け入れざるをえない仕組みが作られる。
 区分変更や病床減を余儀なくされた病院には、消費税を財源にした「医療介護基金」から見返りの補助金が支払われるが、まさに米の「減反政策」と同じ構図である。
 もう一つの柱は終末期の在宅・介護施設での看取りを目指す「地域包括ケア」の構築である。この場合は二次医療圏でなく市町ごとに在宅医療や介護サービスの必要量を決めることが求められる。ここでは介護従事者不足を見越してボランティアの導入を計画に組み込むことになる。
 在宅医療を担当する医師も地域によって不足しているが、在宅医療の最も重要な担い手の訪問看護師は、全国で看護師全体の約2%、2.8万人しか確保されていない。ボランティアもそうだが家族数の減少で介護力は低下しており、在宅医療や地域包括ケアシステムが確保される見通しはたっていない。
 ここで県内医療人の出番がある。政府官邸有識者のいう通りの地域医療ビジョンが果たして可能なのか、検証していく活動が求められているのではないか。政府が変わらない以上、県民のためには医療・介護確保総合法の換骨奪胎を目指す医療人の心意気が求められているのではないかと考えたい。