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【2015.10月号】医療への公的支出を増やすために―保団連の3つの提案を秋の運動の基調に

 いよいよ次期診療報酬改定に向けて、引き上げを求める秋の運動が始まる。
 これまで、医療界が国民医療の充実のために必要な診療報酬引き上げを訴えても、永田町の政治家や多くのマスコミの中で冷たい視線が少なくない。
 その理由の第一は40兆円に近づいた国民医療費の増加である。医療費が伸びているのだから医療機関の経営が厳しいはずはないというのである。しかし国民医療費の増加とは裏腹に、医療機関の経営は決して楽ではない。
 8%になって消費税負担が大きくなったことでさえ理解されていないのである。
 そこで、医療界の要求運動にとって財源問題は大きい問題である。財源がないという財務省官僚の言い分に引き下がることなく、根拠ある主張をぶつけていかなければならない。安保法制の強行成立で人気を落としている安倍政権の今だからこそ、こうした分野でも正面から挑戦しなければならない。
 保団連はマイナス改定の連続による医療崩壊が問題となっていた6年前の2009年に「医療再建で国民は幸せに、経済も元気に―医療への公的支出を増やす三つの提案」を発表した。この提案の真価は6年経った今も変わらない。
 第一の提案は、事業主負担を増やして保険料収入を増やすことである。
 そのためには、非正規労働者を正規化するなど被用者保険(健保)の加入者を増やし、賃金を引き上げ、保険料収入を増やすことである。健保組合の保険料率も事業者負担を増やし、きょうかい健保並みの10%(現行平均9%)にすべきである。この場合、保険料は収入や所得に応じた負担とすることはもちろんである。こうして健保財政の安定化を図ることが出来る。
 第二の提案は、減税を続けてきた企業の法人税課税を現行の23.9%から先進7か国並みの40%前後に引上げ、国の税収を増やすことである。
 こうして企業の法人税と社会保険料の負担率を現行の8.3%から1993年水準の8.7%にわずか0.4%戻すだけで約2兆円という巨額の財源を生み出すことが出来るのである。この負担水準はOECD諸国並みの水準であって過大なものではない。
 第三には、所得税を所得に応じた体系にすることである。現在の所得税の最高税率は消費税導入以降、それまでの60%から50%、そして45%に引き下げられてきた。少なくとも消費税導入前の60%に戻し、所得に応じた累進課税にすべきである。
 こうして所得の再分配機能を高めて、社会保障財源をつくりださなければならない。もちろん消費税の引き上げは必要なくなるであろう。
 加えて保団連は、長期収載薬品(先発品)の薬価を30%下げるだけで約1兆円(10%下げでも3千億円)の財源が生まれることを明らかにしている。
 こうした財源提案は多くの国民の共感を得るであろう。そして診療報酬引き上げの財源は十分にあることを訴えていかなければならない。