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【理事会声明】静岡県のIR型カジノ構想に反対する (2019.2.27)

 新年早々の1月4日、中日新聞は「静岡県は2030年代に初頭にカジノを含む統合型リゾート施設(IR)を、富士山の絶景を望む日本平に誘致する検討を始めた」と報じた。
 2018年7月の通常国会で十分な審議時間もなくスピード成立したIR整備法(実施法)によれば、カジノ付きIRの建設は都道府県や政令市が事業者と連携して国の許可を得ることになる。
 報道によると、県はすでに18年3月に清水港の国際クルーズ船の拠点化に向けて運航会社のゲンティン香港と協定を結んでいる。この会社の親会社がマレーシアに本拠を置くゲンティングループで、シンガポールをはじめ東南アジアを中心にカジノ付き統合型リゾートを展開している会社である。県の幹部は、このゲンティンと連携してIR誘致に手を挙げる可能性を認めたという。川勝知事も「地元が望むのであれば考えるに値する」と述べているというがとんでもない話である。
 カジノは言うまでもなく賭博場である。これは、何の富も産み出さない、無益な貨幣の移転にすぎないマネーゲームであり、個人金融資産の喪失(胴元への移転)を是とするギャンブルである。カジノ設置には様々な社会的弊害があるが、とりわけギャンブル依存症の問題が大きい。IR推進派はカジノはIRの一部に過ぎないというが、実態はカジノ目的でなく訪れた客をカジノに誘導し、収益化するというのが事業者の狙いとなっている。またそうでなければIR施設への巨大な投資は回収できないのである。
 カジノは、理論的確率から胴元が確実にもうかる仕組みになっているのは周知の事実である。しかも、偶然性への賭けで熱中する客にその場で仮想通貨ともいえるチップで貸して、限りなく消費(浪費)させる仕組みである。
 カジノは開催日やレース数が規定されている競輪や競馬、競艇と違い、こうした貸チップ業者が暗躍し、依存症に陥った客に桁違いの借金を引き出させる「限度無き賭博行為」に巻き込む恐れを備えている。
 推進派は外国の富裕層の観光客を呼び込むのが目的というが、実際はカジノ周辺ほど居住者の常習率が増加し、常習者ほど依存症率が増加することが米国の調査で分かっている。
 静岡県はカジノがなくとも富士山や伊豆半島など自然に恵まれた観光地の一つである。こうした自然を楽しむ観光産業を育成させることこそ、地域の活性化に必要なことである。
私たちは県民の健康を守る医療人として、地域にギャンブル依存症を生みだすカジノ構想を看過することはできない。こうした賭博施設の誘致に反対する県民の声を大きく結集することを呼びかける。