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【2023.9月号】診療報酬改定実施時期の後ろ倒しは果たして保険医のためか

8月2日中医協総会
 8月2日中医協総会に示された「医療DX(デジタル・トランスフォーメーション)について(その2)」には、新たに「診療報酬改定の実施時期の後ろ倒しについて」という項目が示された。
 現在改定年は、2月上旬に中医協答申が出され、3月上旬に関係告示等が発出され、下旬に点数表が公開され4月1日より新しい診療報酬での運用が始まる。告示から1か月にも満たない僅かな期間で、保団連は改定のテキストを編集・発行し、各地で新点数説明会を行う講師向けの研修会実施する。それを裏で支える保団連、各協会からの事務局員は印刷所に泊まり込んで深夜まで過酷な作業を行っている。各地で3月下旬から始まる新点数説明会に間に合わせるためにはハードなスケジュールとならざるを得ない。これも全て改定が4月1日から始まるからである。
 また厚労省側も僅かな期間で告示を発出させるため、中には「見きり発車」的に発出されるものもあり、その後に実質訂正であったり補足説明となる疑義解釈や変更通知が3月下旬から出される。それにより医療現場では混乱が起きている。特に前回の医科の改定では顕著であった。
 保団連・協会としても改定の実施時期については十分な周知・徹底期間を設けるように要望してきたので、今回の後ろ倒しには、歓迎できる面もある。

厚労省の後ろ倒しの意図は
 厚労省の意図は、現場の医療機関のことを思ってのことであろうか。厚労省はこの理由として「診療報酬改定DX推進に向け医療機関、薬局等やベンダの集中的な業務負担を平準化するため」としている。オン資でも問題となったベンダへの業務集中による改修作業の遅延を念頭においているようである。つまり改定時期を後ろ倒しすることで改修遅れを防止する。改定でもDX推進のための6月改定である。

薬価改定は4月1日
 診療報酬改定は6月1日施行が予定されているが、薬価改定は従来通りの4月1日のままである。薬価改定が従来通りであることを厚労省は「4月の改定であれば薬価調査を例年通りに実施することが可能」としている。これは「改定後半年程度の価格交渉期間が必要で、そのため早めの薬価調査が必要」ということらしいが、2ヶ月程度の遅れが影響するとは考えられない。むしろ引き下げとなる薬価の改定は1日も早く実施したいのが本音であろう。

初・再診料の大幅な引き上げ実施は4月から
 継続している物価高騰による医院経営が困難を極めている。医院経営の原資である診療報酬の中でも基本診療料である初・再診料の大幅に引き上げを1日も早い4月1日から実施するのが筋であり医療機関の願いでもある。これにより経営が安定することは安心・安全な医療にも結びつくことにもなる。