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【2011.11月号】TPP参加で国民生活や医療がよくなる保障はない

 野田内閣が発足した途端、米国や財界からの圧力によってTPP(環太平洋経済連携協定)参加への動きが加速している。
 
 このTPP参加をめぐる論議は、昨年10月の菅首相(当時)の突然の『第三の開国』発言から始ったのであるが、今もって国民に充分な説明がなされないまま事態が進展してしまう恐れがある。
 
 昨年オバマ大統領はサブプライム問題からリーマンショックへ続いた金融危機から低迷を続ける米国経済を立て直すことを目標に、TPPへの参加によって輸出を2倍に拡大し、雇用を200万人増加すると表明したが、その直後に先の菅発言がなされたのである。しかしこうした流れのなかに突如でてきたTPP参加についての報道は真実を伝えてきたとは言いがたい。  
 
 このため、TPP参加による国内産業への影響として農業だけが取り沙汰されている傾向があり、広く国民の関心が集まっていない。医療界にとってもTPPがわが国の医療制度にどのような影響を与えるのかについて、まだまだ十分な情報が行き渡らず、関心はもう一つである。
 
 今、農協など農業関係者が最も敏感に反応しているのは、TTP参加が規模の小さい国内農業にとって深刻な打撃になると考えているからである。
 
 しかし今やオリジナル(4カ国)TPPから米国主導に移行したTPPの狙いは、国際化、グローバル化と称して日本経済全体を改造する、すなわちアメリカ化することにある。これはTPPに先行した北米自由貿易協定(NAFTA)を見ればすぐ分かることである。すでにカナダやメキシコの農産物加工など国内産業の有力部門は米国系企業に取って代わられ、貧富の格差が増大している。
 
 TPPの中心的な標的は投資と金融、および政府自治体調達(公共事業)の内国民待遇にある。米国が期待した金融の自由化、郵政民営化は、郵貯、簡保の温存と小泉構造改革の破綻で期待はずれとなったが、一方で保険医休業補償などのわが国特有の非営利の共済制度が崩されたという害悪をもたらした。
 
 米国の次の標的の一つは医療などサービス産業への参入にあり、これに呼応するのが「ライフイノベーション」構想である。ここでは外国人医師の受け入れ緩和、混合診療の原則解禁、病院経営の民営化などが論議されている。まさに日本の医療保険制度の根幹に関わる問題が扱われることになる。こうしたTPPのもたらす害悪を医療界からも大いに広めて行かねばならないであろう。