主張

ここから

【2012.2月号】失われた再診料の引き上げこそ、診療報酬改定の基本

 昨年末、次期診療報酬の改定率が診療報酬全体で0.004%(16億円)の引き上げという形で決着したが、保険医にとっては厳しい改定といわざるを得ない。
 改定率の内訳をみると、診療報酬「本体」を1.379%(5500億円)引き上げ、一方で薬価・医材料を1.375%(5500億円)引き下げるという内容である。つまり財政規模から見ると事実上ゼロ改定ということになる。
 ところが、これと全く別枠で長期収載医薬品の0.9%(250億円)の引き下げが行なわれるので、結果としてマイナス234億円の改定となるのである。
 これで今次改定も財務省の巧妙な作戦通りで、医療関係者の総枠引き上げ要求を押しつぶしたことになった。
 そこで次の焦点は「本体」1.379%の5500億円の配分問題となっている。
 中医協で診療側は再診料引き上げを強く要求しているが、それは小泉構造改革の10年で再診料が5点も引き下げられ、結果として診療所の経営余力の低下、スタッフの減少につながってきたからである。
 支払い側の健保連委員は、診療所の収支のわずかな改善を示した医療経済実態調査の結果を根拠に引き上げに反対しているが、企業の内部留保がこの10年で大幅に増えている実態には口をつぐんでいる。
 さらに彼らは病院の再診料を診療科毎に算定できるようにしてほしいという切実な要求に対して、「保険者や患者の負担増につながる」という「ためにする」論理で認めようとしていない。
 愛知県津島市で開催された公聴会でも、再診料をめぐって大企業健保の組合員からこうした『患者の負担増』発言がされているが、これは医療機関の責任ではなく、この10年間の政府の医療費削減方針の結果にあることを無視した発言である。
 医科、歯科を問わず、保険医の共通の願いは技術料の基本点数である再診料引き上げであり、それが医療経営の安定につながる最善の保障であることは論をまたない。
 1月14日、保団連は再診料を10年前の74点に戻すことを要求しているが、これは5500億円の原資で充分可能な数字である。製薬業界最大手の武田薬品1社が計上した2010年度の利益剰余金(内部留保金)は2兆3千億円に達する。
 引き上げに資する医療費本体が製薬企業1社の内部留保の4分の1にすぎない日本の医療行政はどこかが間違っている。しかもそれは人為的な誤りなのであり、政治の良識で是正できるはずのものである。
 わが国の医療人が大同団結すればその是正は実現可能ではないだろうか。