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【2012.10月号】「社会保障制度改革国民会議」を独走させない国民運動を

 2段階の消費税増税を行う「改正消費税法」と社会保障関連の財政支出削減策を柱とした「社会保障制度改革推進法」を含む「一体改革関連8法」が成立し、8月22日に施行された。
 その後政局は国民不在のダブル党首選挙の喧騒の中で混迷しているが、施行にしたがい近々のうちに「社会保障制度改革国民会議」が発足することになる。
 この「国民会議」は、かつての小泉構造改革路線の先導役をした「経済財政諮問会議」のように、これまでの「社会保障制度審議会」に代わって社会保障制度の「改革案」を練り上げる法的地位を与えられている。
 このことは、憲法で示された社会保障という貧困と格差を埋め合せるはずの社会的システムの基本的議論が、たかだか20名の委員の議論に委ねられることを意味している。
ここで想起すべきことは、かつての「経済財政諮問会議」は、主に財界の代表者、あるいはその代弁者に占有されていたということである。
 国権の最高の機関は、憲法で定めるように国民から選挙で選ばれた国会である。しかしこれまでの政権はいつの間にか「元老院」的権力を付与された機関を作り、国民の声が届きにくい政治権力構造を作り上げてきた。
民主党政権が政権交代で期待された理由の一つは、それまでの自民党主流政権の閉塞的な政治手法に批判が集まり、より開かれた政治、わかりやすい政治を期待したからではなかったか。
 では、このたびの「国民会議」が旧弊から逃れ、国民の願いと国の財政規律を背反させない結論を得るためにはどうすべきなのだろうか。
 その目的は、社会保障が目指すべき国民の福祉、最後まで全うされるべき人間的尊厳の在り方についての国民的合意の形成にあるのだから、老若男女、労使などの国民の各階層の代表者によってオープンに議論されるべきであろう。
 全国各地で旺盛な公聴会を開催し、大規模な世論調査も行って合意を目指すことが望まれる。もちろん財政上は法人・企業負担もあることから、企業家の意見も尊重されるべきではある。しかしこれまでの「審議会」のように、大企業や財界の代弁者で「国民会議」が占有されないように、国民的な監視を強め、国民的議論の場が保障されるようにするべきである。
 保団連・保険医協会としても、あるべき医療保障、介護保障の姿について、これまでの議論を生かしながら、新たな提言をまとめ、「国民会議」に反映させるように努めることが要求されよう。