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【2012.12月号】日本の薬価制度の不透明さ、不公正さを排除すべし

 11月8日、全国保険医団体連合会(保団連)が厚生大臣あてに「公正で透明な薬価制度改革」のための要望書を提出した。これは日本の医療費を左右する重要な問題提起をしたものである。
 わが国の薬価、すなわち薬剤費は、医療費総額の3分の1を超える推計9.83兆円という巨大な市場を医薬品産業に提供してきた。日本の医療費の中で薬剤比率が諸外国に比べて高い理由が、技術料の評価が低いことの一方で、英仏の約2倍、ドイツの1.3倍という日本の高い薬価にあることはだれの目にも明らかである。
 その結果、わが国の医薬品製造業の利益率が他の産業に比較して異常に高いこともよく知られた事実である。例えばトップ企業の武田薬品工業だけで年間3500億円を超える営業利益があり、利益率は総売り上げの20%を超えている。
 そこで保団連は、高い薬価を野放しにしている現行の薬価決定方式を改革することを要求したものである。
 その改革提案の主要なポイントは以下のようになる。
1 現在、新薬の薬価算定方式は、厚労省内に設置されている保険局医療課を中心とした「薬価算定組織」で非公開で検討されており、そこでまとめられた算定案が中医協に出され、そのまま追認されて薬価収載されている。まず第一にそこで検討されたすべての資料は公開されるべきである。
2 同じ効能を持った類似薬品がある場合、新薬の薬価もそれに合わせる方式が基本でありながら、1982年からは製薬業界の要望に沿って新薬には様々な「補正(新薬)加算」が新設され、年々引き上げられてきている。例えばジェネリックに対抗して販売されている配合剤や口腔崩壊錠、用法用量を変えただけの薬剤にも「新薬」加算が付き、薬価を押し上げているのである。こうした慣行を改め、これらの補正加算を当面2000年度水準に戻し、比較薬剤との間で有用性、安全性に有意差がない新薬は比較薬の薬価を上回らないようにすべきである。
3 比較する類似薬がない場合は原価計算方式になるが、その場合は製品総原価の内訳を公表させ、他の製造業と比較して異常に高い営業利益率を係数として採用しないこと。
4 外国でも販売される医薬品については、外国の薬価が最終患者価格で示されていることから、調剤技術料などの薬局マージンを差し引いた薬価だけの金額で適正に国際比較を行って価格調整を行うべきである。
 その他にも要望項目があるが、不当に高い日本の先発品薬価を引き下げることは直接患者負担の軽減につながる効果があり、保険医としても大いに要求すべきことである。
 厚労省の薬価算定方式が不透明で不公正なものであることは保団連が指摘するまでもなく明らかなことであり、こうした官僚制度の悪弊を断ち切らねば、日本の医者と患者はこれからも製薬企業の良い餌食になるだけであろう。