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【2014.7月号】自治体は「国の出先機関」でなく住民を守る砦になるべきである

 6月18日、絶対多数与党の下で、いわゆる「医療介護総合法」が成立した。昨年12月成立したいわゆる「社会保障制度改革プログラム法」に続く、自助を基本とした社会保障貧困国家への道のりが止まらない。
 残念ながらこの自公中心の政権が続く限り、国政での抜本的な政策転換は期待薄であるが、それでも残されている道がある。
 それは住民にとって身近な自治体を住民の立場に立たせ、住民本位の道を歩むことである。
 自治体にも地方消費税など独自な財源があり、地方議会という独自の政策決定の基盤がある。この地方自治という憲法第八章の規定は住民にとって大きな武器である。
 例えば、医療介護総合法は都道府県が新たな地域医療ビジョンにしたがって、病床目標などの医療供給体制の整備を推進することを規定した。県民のいのちを守るための計画は県が独自に作成できる。たとえ国の意図に反する県の決定があってもそれが直ちに無効になることはない。
 介護法の改悪で来年から要支援への訪問介護や通所介護は市町の事業に移管することになった。国が介護保険の支出を制限し要支援を切り捨てるという決定だが、市町が住民の支持の下で要支援へのサービスの水準を落とさないように工夫する道は残されている。
 国が手をこまねいてきたこども医療費助成、ワクチン助成など自治体独自の助成制度の歴史も長い。少子化対策などはむしろ自治体での積極的な取り組みが少なくない。
 そういう中で国保未納世帯や未納に起因する差し押さえ処分の急増に歯止めを掛けられるのも国でなく自治体であろう。
 自治体は国の上意下達に汲々とするのでなく、自らが住民のいのちと暮らしを守る砦にならなければ地域の活性化も、地域おこしも何もない。
安倍政権が何を言おうと住民の利益に反する原発再稼働も自治体の力でストップできる。
 健診や予防活動が充実すれば、逆に医療費は下がるという経験を思い起こすべきである。要介護者も減らせるのも自治体のやる気次第ではないか。
 自治体の赤字(負債)は住民がつくりだした赤字ではなく、国の従僕になり下がって住民に無関係の事業投資を行ったことが原因だという確かな分析もある。自治体は住民目線に立てば何が役に立ち、何が役に立たないか見極める力があるはずだ。
 自治体が変われば国政も変わる期待が膨らむであろう。かつての民主党政権の轍を踏まず、住民のエネルギーで真の政権交代が起こるかもしれない。
 保険医として、住民とともに医療介護福祉の抜本的な充実を目指す流れの一翼を担えるよう努めていきたい。