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【2014.12月号】総選挙の争点は何か、保険医の要求は国民生活の安心と安全

 11月21日、安倍晋三氏の独断で衆議院解散が行われ、あわただしく12月14日の総選挙投票日を迎えることになった。今回の解散の必然性については、マスコミの評価もほぼ一致して「大義なき解散」と評価している。しかし冷静に見ると、「アベノミクスの3本の矢」が空を切ったまま任期を半分終えた安倍政権の延命のための「政略解散」であろう。
 そこで、医療者にとっての総選挙の争点を考えてみたい。
今回の争点の第一は消費税の10%引き上げを可とするかどうかである。現与党の政策は、軽減税率導入をちらつかせて1年半後に10%引き上げをするとしているが、延期というアメの後ろに引き上げを忍ばせる、まさに政略そのものである。
 そもそも消費税率の2倍アップは、少子高齢社会を迎えた社会保障の財源確保という大義であった。しかしその後打ち出されてきた社会保障の一体改革では、消費税10%となる1年半後には負担増オンパレードとなる。すでに70歳から75歳までの窓口負担は2割になったが、財務省筋からは3割負担案も取りざたされているようだ。 
経済的に余裕のある患者のための申出療養という自費併用診療(混合診療)のさらなる拡大、入院時の食事療養費負担の倍増、後期高齢者の保険料軽減制度の廃止、さらには高齢者の占める割合が多くなっている生活保護費の削減も予定されている。
 一方で公的年金の引き下げも行われ、勤労者の賃金上昇の気配無く、国民所得の貧富の格差が拡大しているのが今日の現実である。こういう中でたとえ生活必需品の一部に軽減税率が導入されたとしても、国民の暮らしがよくなるはずがない。
 われわれ医療界はもともと社会保険医療の消費税率をゼロ税率にと主張してきた。これは非課税という原則に沿うものであり、何のためにと言えば患者負担軽減のためなのである。だがこれまでの与党はこの医療費への課税問題を見事に避けている。医療者にとって、10%引き上げ反対、出来れば5%に戻すことと医療費ゼロ税率の実現は同じ次元の問題である。
 争点の中にはマスコミが触れたがらない経済財政諮問会議路線というべき政治手法の問題がある。総理大臣の諮問機関とされる経済財政諮問会議は、医療に一般の商取引と同様の市場原理を導入し、保険会社や不動産会社等の営利企業の参入を促そうとしている。最近ではレセプト等社会保険ビッグデータの活用と称して、IT産業の新たな市場を創ろうとしている。
 また諮問会議は、公的医療費の4割近くを占める医薬品市場で大手メーカーの高価格を野放しにしながら、患者の医療機関への受診抑制を強力に推進しようとしている。このように、アベノミクスの後ろ盾となって権力の私物化を図っている経済財政諮問会議を廃止することも総選挙の争点であるべきだ。
 その他にも原発再稼働問題、日本の防衛に不要なオスプレイの配備や沖縄米軍基地の拡大問題など、国民の安全と安心に関わる本来の争点も多い。棄権することなく、主権者としての保険医の1票を投じようではないか。