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【2015.7月号】国会は日本の平和、安全保障の在り方を国民の目線で分かりやすく議論せよ

 通常国会は「平和安全法制整備法」「国際平和支援法」の成立を期す自公与党の意向で、95日間という大幅な会期延長となった。
 この法案は、米国との間の「集団的自衛権」の発動で、米軍が出ている他国への自衛隊の派遣を可能にする法案である。
 今までの国連平和維持活動(PKO)への派遣や、イラク戦争特別措置法での工機部隊の派遣とは異なって、現地での武力行使を伴う危険性もある、あるいは対峙国からの武力攻撃の危険性のある任務に自衛隊を派遣することを可とする法案である。
 戦後70年、わが国は明治以来50年以上続いた他国との戦争の歴史に終止符を打ち、平和な日本、戦争をしない国としてのイメージが国際的にも定着しているというのに、なぜ今「集団的自衛権」なのか、その対称が何故米国なのか、という国民的疑問がある。
 日本と米国の間にある「日米安保条約」でさえ「集団的自衛権」は前提ではなく、米国に基地を提供するかわりに日本周辺への武力攻撃に対し米軍が対応する、といった条約なのである。この日米安保の是非をめぐって国民を二分した歴史があったが、このときでさえも自衛隊による他国への武力行使は認められていない。
 今の安倍政権の方針は米軍が出ている他国で、それが地球の裏側であっても、武器を持った自衛隊を出動させるというものである。
 日本は憲法第9条がある以上、領空、領海以外の場所で自衛権の発動以外の戦争行為は出来ない国である。これがアジア諸国に70年前までの日本のイメージを払しょくさせ、様々な経済協力や文化協力を推進させてきた力である。
 これで70年間、戦争で他国民を殺すこともなく平和が保たれてきたことが大事な事実であり、国民としての安心感、そして自衛隊員の誇りにもなっているのである。
 安倍首相は国民への説明をする前に米国議会で演説し自衛隊派遣を約束した。こうした米国には格好よくふるまうが、国民には分かりにくい説明で逃げる態度は政治家として失格ではないか。報道を見る限り自衛隊員とその家族に対し、こうした約束を米国としたが了解してほしいといった発言もない。
 防衛省の報告でもイラク派遣のあと若い自衛隊員の自殺が増えたという。また防衛大卒業生の自衛隊への任官が減少したという。
 周辺を海で囲まれ、国土も狭く資源もない日本を武力で侵略支配しようという国があるはずもない。強いて言えば海の向こうにもかかわらずこの地に軍事的拠点を確保したい米国の覇権主義に利用され、今また「集団的自衛権」で追随することの方がよほど軍事的に危険であり、また沖縄の発展を阻害し、苦しめることにもなっている。
 日本の平和と安全を図るもっとも確実な手段は周辺国との外交、相互的経済関係の強化や文化交流である。米英との無謀というべき戦争に突っ込んだ日本の反省はどこに行ったのか。もう一度、日本の平和と安全を守るために必要なことは何か、国会でのわかりやすい議論を展開するべきである。