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【2017.2月号】「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」では薬価は下がらない

 昨年末、高額薬剤オプジーボの引き下げ問題で保団連の後塵を拝した厚労省は、中医協に対して、わずか2頁の「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」という文書を提示した。
 これを見ると、厚労省が考える「抜本改革」とは(1)年4回の薬価見直し、(2)全品対象の年1回の薬価調査、(3)新薬創出等の加算制度を「抜本的に見直す」こと、費用対効果の高い薬には薬価を引き上げること、費用対効果評価を本格的に導入するために第三者的視点に立った組織・体制のあり方を検討することが挙げられている。
 こうした改革とあわせて、今後の取り組みとして、「薬価算定方式の正確性、透明性を徹底する。具体的には、…薬価算定根拠の明確化や算定プロセスの透明性向上について検討し、結論を得る」としている。
 大いに期待したいといいたいところだが、ここでは触れられていない大きな問題がある。
それは新薬高止まりの元凶である「新薬創出加算」の見直しが、「費用対効果の高い薬には薬価を引き上げる」ことで置き換えられていることである。
 保団連がこれまで指摘してきたわが国の新薬高薬価の構造は、厚労省官僚と製薬企業との直談判の場である特権的な「算定組織」に起因している。ここでの薬価や加算額についての検討経過は、議事録どころか検討資料も公開されていないことは周知のことである。
 仮に新薬創出加算が見直されたとしても、今度は新薬発売までに決着がつくはずもない費用対効果評価に、不透明な仕組みが持ち込まれる危険性が高いといわねばならない。
 さらに、今回の基本方針では、年1回の薬価調査と年4回の薬価改定が提言された。これは保険収載薬価と市場実勢価格との差額(かい離率)が大きい薬剤を期中にも引き下げようというものである。つまり高薬価品目の引き下げを薬局と企業の取引相場を利用して推進しようというものだが、これで高額な新薬が引き下がるのかどうかは明確ではない。
 新薬を独占している企業がそうやすやすと購入価格を下げるはずはない。結局せいぜいジェネリックの登場した長期収載品の引き下げ程度の効果しかないはずである。
 高薬価抑制の基本は算定過程の公開であり、新薬創出加算といった企業と官僚組織の特権的癒着の仕組みを廃することでしかない。
 新薬を開発した企業はその効果を堂々と世に問い、その時に開発費用の詳細を中医協に公表すればよい。それが製薬企業の機密情報という隠れ蓑ですべて企業の言いなりになる実態は改革しなければならない。
また、厚労省が提唱する医療での費用対効果評価での、効果が良い、悪いの判定基準、その判定を分ける閾値の設定はそう簡単ではない。医療上の効果とは薬だけであらわれるものではなく、病期や患者に関わる医療人の対応や技術的レベルも影響しており、慎重に扱われなければならないであろう。
薬価算定の抜本的改革は「新薬創出加算」の廃止から始めるべきである。