【2018.10月号】教育費負担の軽減は暮らし向き改善の重要課題―県政世論調査から見えてくる生活実態
先ごろ、平成30年度県政世論調査の概略が公表された。この調査は県知事の直轄組織である知事戦略局が毎年4000人の県民を対象に行っているものである。
それによると、「暮らし向きが苦しくなっている」と答えた県民は33%で4年連続で減少したということになるが、「暮らし向きは同じようなもの」と答えた人が昨年より増え、両方合わせると91.3%となり昨年より多い。ということは圧倒的多数の県民にとって暮らし向きは変わらず、アベノミクスの恩恵を受けているとは言えない結果である。
こうした調査では年代別の結果が気になるが、まだ詳細版が未発行のため昨年の同調査を参照すると、20代から60代では過半数が「給料や収益が増えない、又は減った」と答えており、70代以上になると「毎日の生活費が増えたから」あるいは「家族の病気、介護などで出費が増えた」が明らかに増加しているのである。
この中で注目すべきは「教育費や学生の子どもへの仕送りが増えたから」という回答が40代、50代で多いことである。とくに40代の県民にとっては暮らし向きが苦しくなった理由の第二位(男45.6%、女50.6%)になっている。
こうした県政世論調査の結果は、現在の国民生活をそのままに反映しており、県政としてこの結果をどう生かすかも課題だが、実はその前に国の予算、即ち税金の使い方が問われていると考えなければならない。
よく言われるように、安倍政権になって不正規雇用が増え、勤労者の名目賃金は上がっても実質賃金は減少しており、一方で国民負担となる教育費や医療費、介護費用が増えているのである。それを補うのが消費税だったはずだが、実のところ法人税の減税に充てんされただけで、とくに大企業だけが減税や賃金抑制で内部留保が数倍に増えているという実態である。
三選された安倍首相は自衛隊の海外派兵を念頭にした急ぐ必要もない改憲に加えて、どういうわけか保育の無料化を総裁選の公約とした。保育の無料化は選挙目当てといったものではなく、実は生産年齢世代の急激な減少で悩む企業の人手不足対策のためといわれ、子育て支援には必要ではあるがこれで国民の暮らし向きを大きく変えることはできないのである。
当面もっと切実で、日本の将来にとっても重要な問題は大学進学にかかる教育費負担の軽減である。低所得者層への授業料免除、給付つき奨学金の大幅な拡大、大学への国の交付金の増額などを実現しなければならない。来年の参院選に向けて、大企業本位のアベノミクスに対抗する野党側の経済政策、国民生活向上のための予算配分方針が選挙の争点として浮上してほしいのである。医療費や介護費用に苦しむ高齢者に対する対策だけでなく、若年世代への支援策も重要な政治課題として注目していきたい。