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【2019.5月号】静岡県の災害対策は果たして万全か 必ず来る大規模災害への十分な備えを

 去る4月15日、昨年秋の大規模停電の医療機関への影響についての会員アンケート結果をもとに、協会として県健康福祉部へ3項目の要望の申し入れを行った。
要望の第一は、入院や人工透析、分娩施設など、電力の停止が生命の安全に直結する医療機関への送電の復旧が優先的にできるよう、日ごろからの連携体制を確保し、電源不足による医療事故が起きないようにすることである。
 この点では、浜松市など一部では電力事業者と透析施設との連携が取れているようであるが、県全体では十分とは言えない。県としての事業者への要請、指導が望まれる。
また、在宅で人工呼吸器や在宅酸素濃縮装置を使用している患者に対する対応も話題にしたが、日ごろから主治医や機器供給業者と患者家族との間での丁寧な説明と連携が必要である。国制度として、医療機関が人工呼吸器使用患者へ貸与する非常用電源の購入を助成する制度もあるというが、十分に周知されているだろうか。
 要望の第二は、医療機関に対して緊急時使用のディーゼル・ガソリン・LPガス仕様の自家発電機の購入助成制度の創設である。今回のような長時間停電では、診療を再開しようにも電力がなければどうにもならないのが今日の医療である。このため今回のアンケートでも自家発電装置の購入助成制度を要望する声も多かったのである。市町が自由に用途を決められる災害対策予算があるので市町に要望を出すこともできるという話があったが、ぜひ県制度を創設してほしい。
 要望の第三は、地域の医療機関の診療再開の情報が迅速に伝わるような、新たな情報伝達システムを作ってほしいということである。自分の医院はまだ再開できない場合でも問い合わせに対してすでに再開している医療機関を紹介することができればよかったという声も多かった。この点では現行の「医療ネット静岡」が活用できればよいわけである。しかし、今の医療ネットは医療機関側が情報を書き込めないシステムである。
 大規模災害時でもバッテリーさえあればインターネットでの検索は可能である。その活用の有用性は東日本大震災でも熊本地震でも証明されている。県として、医療機関の稼働情報をいち早く伝える手段として、この医療ネット静岡を改善できないか、とくに医療機関側が情報を入力できるよう検討をお願いしたところである。
 そのほかにも、南海トラフ地震のような長期の影響をもたらす大規模災害に対応するために、県が確保すべき課題は多い。
大災害対策の際のあるべき避難所のレベルにするために、県として避難マニュアルの抜本的改善を期待したい。とくにプライバシーの確保、エコノミークラス症候群の防止、口腔ケアの確保がポイントである。この点では避難所・避難生活学会からは組み立てやすい段ボールベッドの導入が提言されている。もちろん飲み水だけでなく口腔ケアのための水、水道の準備も欠かせない。さらに乳児を抱えた母子には専用の避難所が用意されなくてはならないであろう。
 「災害は忘れたころにやってくる」ことを決して忘れてはならない。