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【2020.2月号】地域の病院の統廃合の意味するもの 急性期病床削減に暴走する厚労省を批判する

 昨年9月、厚労省の「地域医療構想に関するワーキンググループ」が公立・公的医療機関の再編統合を促す「具体的対応方針の再検証」を要請する医療機関のリストを公表した。
 これらの医療機関は当初、全国で対象医療機関数1,455病院の約3割になる424施設で、当県では41病院中14病院であったが、その後1月17日に追加があり440病院となっている。ただし当県は1病院(西部医療圏のJA遠州病院)が除外され、13病院となっている。
 この公表の内容について、11月22日には厚労省の担当者と関係医療機関の管理者等が出席して、公開の場で意見交換会が持たれた。
 名指しされた医療機関の関係者からは、病院リストの公表はあまりにも唐突で、撤回を求める声が相次いだというが、厚労省側は「今後は丁寧に取組を進めていきたい」、「今回の公表は地域における議論を活性化してほしいということであり、撤回するようなものではない」と木で鼻をくくったような説明である。
 多くの病院関係者は唐突な発表だったと受け止めていたようであるが、実は厚労省にとっては満を持して出してきたものであり、突如として出した思いつき的な方針ではないのである。
 この源流は、経済財政諮問会議のお墨付きで2016年度に各県で策定された地域医療構想の病床削減計画にある。これには、団塊世代の全てが75歳以上となる2025年度までに、全体の病床数を13万床減らすものだが、急性期病床は20万床減らすという計画にある。2020年度中に具体的対応を決めるという当初計画の進捗が遅れていることに、厚労省の官僚たちが大きな波紋、反発を呼ぶであろうことをわかっている官邸の了解のもとに公表したものと見るべきであろう。これを強行するために内閣改造で加藤現厚労省が再度起用されたとも言える。
 厚労省が目論む急性期20万床の削減は、医療法上に定められた一般病床での16:1という医師配置基準に照らすと12,500人の医師数の削減に相当し、ここではじき出される医師を慢性期や回復期病棟に回すという目論見でもある。もちろん狙いは医療費抑制と医師養成の抑制にあるわけである。
 だから今回のリスト公表は急性期病床に限られているわけで、診療実績(患者件数等)が少ない、類似する医療機関が近接している、という2つを基準にしている。
 全国的にはこれまでも統合を進めている医療機関もあり、県内では中東遠医療圏の中東遠総合医療センターなどがそれに該当するものであろう。
 しかし、こうした再編統合をむやみにしてよいというものではない。地域住民、自治体等との綿密な検討、話し合いで推進すべきものである。
 今回挙げられた病院の中には医師不足のため地域に必要な診療科が開設できず、経営不振に陥っている病院もある。高齢化する地域住民にとって病院へのアクセスはその地域に住めるか、住み続けられるかどうかの問題でもある。
 本年9月までに再編統合の対応に結論を出せという厚労省の押しつけは、憲法で保障された主権在民、地方自治の原則からも許されない。厚労省の暴走を許すな、地域医療を守れ、というスローガンは勤務医にとっても無視できない住民の叫びであろう。