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【2023.7月号】健康保険証廃止など誰も望んでいない、保険証をマイナンバーカード普及の人質にするな

保険証廃止を強行する岸田政権

 2024年秋に健康保険証をマイナンバーカードに一体化させることなどを盛り込んだマイナンバー法など関連の改正法が6月2日参議院で成立した。マイナンバーカードに一体化させられたマイナ保険証を巡っては他人の情報が紐づけられるなど問題が多数起きており多くの国民が不安視している。「マイナ保険証で便利になる」と政府は宣伝しているが、そもそもマイナ保険証など多くの国民が望んだものでもなく、ましてや医療機関が望んだものではない。当協会が実施した会員アンケートでもマイナ保険証を確認するオンライン資格確認システムを導入している医療機関の約65%でトラブルが発生しているとの回答が寄せられた(6月1日現在)。またカードリーダーの使い方が分からない多くの患者のサポートで受付業務に支障が出ているなど医療現場に混乱を招いている状況も見えてきた。本来任意であるマイナカードの取得では普及が進まないと、高額のポイントを付与するなどあの手この手で普及を図ってきたが思うように伸びず、遂に「健康保険証廃止」という健康保険証を「人質」にする秘策に打って出てきた。健康保険証を廃止すれば嫌が上でもマイナ保険証に移行すると考えたのであろう。少なくとも60年以上の使用実績があり大きな問題もなく便利に使われてきた健康保険証を廃止することには大きな疑問がある。しかも取って変わるマイナ保険証は欠陥だらけの問題保険証である。

資格確認書の問題点
 
 健康保険証を廃止した場合マイナカードの取得は建前上任意であるので、マイナカード取得しない方のために「資格確認書」を用意すると政府は説明している。この「資格確認書」には健康保険証に記載がある氏名、記号、番号、などが記載されると言われているので実質的な健康保険証となるようだ。つまり廃止しても実質同じような物をまた新たに発行することになる。これでは廃止の意味が見えてこない。更に大きな問題は本人が自ら申請をしないと「資格確認書」が発行されないということだ。健康保険証は受給資格が満たされていれば保険者から郵送で自動的に入手できる。「資格確認書」は受給資格があっても申請をしないと入手出来ない、つまり健康保険料を支払っていても資格の確認が出来ず無保険状態となり10割負担を強いられる恐れがある。しかも「資格確認書」の有効期間は最大1年間で毎年毎年の申請が必要とされる、特に高齢者や入院・入所中の方は申請が困難となろう。保険証を廃止するのであれば問題が起きないようにマイナ保険証の所有の有無に関わらず全ての受給資格者に「資格確認書」を発行すべきであるが、政府は頑なにこれを拒否する姿勢である。

健康保険証を廃止するな

 マイナンバーカードの取得は任意である。マイナ保険証も当然任意であるべきで、対応する医療機関側の「オン資」も任意であるべきである。何ら大きな問題もなく長い使用実績がある患者、医療機関にとっても便利な健康保険証廃止などとんでもない愚策である。デジタル化が進んでいる時代である、デジタル化で確かに便利になるメリットも多いであろうがアナログにはアナログの良さもある。まだ完全デジタル化には時期尚早の感がある。少なくとも「欠陥」や「問題」は解決・解消され、国民や医療機関の理解が得られるのが大前提であろう。少なくとも来年の健康保険証廃止は撤回すべきである。