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【2014.2月号】今次マイナス改定で地域連携、医療連携ができるか疑問だ

 閣議決定により、診療報酬の改定率(総枠)が決まった。いつもながらのことであるが、中医協での論議もむなしく結局財務省の思惑通りなおマイナス改定となった。
 しかし、その後の出てきた個別改定項目の「案」を見ると、今回の改定には数字に出てこない問題点があまりにも多いことが明らかになってきた。
 例えば、「治療目的でない」うがい薬のみの処方が認められなくなる。なぜこんな提案がされたのか、その背景は何かを考えておくことが重要である。黙っていると次は外用湿布薬、解熱鎮痛剤などが狙われてしまう。ここは大いに異議を唱えなければならない。
 しかし今次改定ではもっと重要なねらいが改定の「基本方針」に現れている。それは医療法の改正に先駆けて行う「医療機関の機能分化と連携、在宅医療の充実等」への誘導である。これは医科にとってこれまでも取りざたされてきたものである。
 このなかでは「地域の実情に応じたネットワークを構築し、地域全体で地域の医療需要をにこたえていく『地域完結型』の医療提供」が強調され、これを診療報酬や国の新たな「基金」を使って推進するというねらいである。
 ここでいう「機能分化」とは、一日当たりの医療費が高い急性期病床の条件を厳しくして削減するねらいがあり、そのため急性期病床から行き場なく退院してくる患者を地域連携で在宅での受け入れ体制を作るという意味である。
この第一弾として地域包括診療料(加算)が打ち出されてきた。診療所の開業医が主治医となって複数の疾患(認知症、高血圧、糖尿病、脂質異常症のうち2つ)に対応すれば、診療料または加算を算定できることになった。
現実に今も開業医はいろいろな病気を抱えた高齢者を診ている。病態の重症度や、医療上の必要性に応じて専門医を紹介する当たり前の医療を行っているが、包括診の算定要件を見ると本来の意味の連携に対する評価とはかけ離れている内容である。
 まず疾患を4つに絞った理由が何かわからない。各種のがんや脳血管障害や虚血性心疾患、呼吸器疾患のような連携が重要な疾病がまるで視野にないように思える。
 加えて、診療料算定の場合は、時間外対応加算1、常勤医師3人以上で在宅支援診であることの3条件をすべて満たすことが必要であり、加算算定の場合は3条件のいずれか一つが条件となっているが、これは在支診の整理を行うねらいであろう。
 さらに院内処方が原則で、院外処方箋発行の場合は24時間対応をしている保険薬局との連携が要件となった。この場合は薬局に患者のかかっている全医療機関のリストを渡せ、とまで指示をしているが患者の同意が必要であろう。保団連の要求の反映と思われるが、要件を満たせば7剤以上投与の減算規定の対象外とするようだが、果たしてこの主治医機能評価点数を選択可能な医療機関がどの程度あるのだろうか。
 結局のところ、開業医に責任を負わせた地域医療の連携では、現実の医療実態にそぐわず、最終的に行き場のない患者を多く生んでしまうように思えてならない。