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【2014.3月号】今次改定の背景にある管理医療的発想に大きな懸念あり

 今次改定の特徴を一言で表現すれば、「急性期。回復期、慢性期に関係なく、入院患者を在宅へ復帰させる医療費抑制戦略」ということである。
 このため病院サイドには「在宅復帰率」とか「在宅復帰機能強化加算」の要件を導入し、受け皿となる診療所医師には今まで以上の大きな役割が課せられたということである。
 それが「主治医機能の評価」という設定なのであるが、この評価設定には、医師の診療スタイルや裁量といったこれまでの診療方針に制約をもたらすかもしれない懸念もある。
 たとえば、患者の同意を得て「担当医を決めること」になり、「関係団体の研修を終了していること」が明記されたことにどんな意味が出てくるか。
 これまでは来診する患者との信頼関係があって、高血圧をはじめ糖尿病、高脂血症、認知症といった慢性疾患が安定的な状態にあれば、自分の専門領域ではなくても診療をしてきたのが多くの開業医の実態であろう。それが限られた医療資源からも患者の利益にもかなっているということも判断にある。
 それが少なくとも二つの疾患で主治医となることをわざわざ患者に確認を取り、他の医師にかかっている状況を把握して投薬内容を確認し、場合によっては保険薬局にその内容を知らせる業務を行うことになる。
 医師にとっても患者にとっても4疾病のうちどの疾病がどの担当医になったかを確認しなければならないことになる。この設定の背景にいわゆる「登録医制度」が見え隠れしていないかとの疑念も出てくる所以である。
 さらに4疾患の中に認知症が入ったことは問題を複雑にさせるであろう。なぜなら「あなたは認知症だ」と告知して診療をしているとは限らないからである。他院の医師と認知症の診断が異なった場合はどうなるか、患者との信頼関係にもヒビが入りかねない。
 その他の要件にある健康管理、介護保険にかかる対応、在宅医療の提供、および24時間の対応、といったハードルはどうであろうか。
 介護保険の意見書の作成はともかく、健診をやっていること、在宅往診や24時間の対応を求められているが、20点加算程度で診療所の対応は可能であろうか。
 考えてみると、こうした在宅の受け皿整備は医師サイドあるいは患者の要望ではなく医療費抑制ありきの政治的手法から導きだされているのではないか。
こうした管理医療的手法で在宅医療へ誘導し、診療所医師の診療方針やスタイル、医学的裁量のコントロールを図ろうとしているようだが、そうした手法は多くの医師の望むところではない。必要なことは、日本の高薬価構造を是正し、必要な医療行為や技術料に適正な点数を配分することである。