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【2016.5月号】震災被害から全ての人が立ち直るために被災者生活再建支援法の充実を図れ

 5年前の東北大震災の復興に後れを生じている中で、熊本地震が発生した。まさに地震列島日本の宿命的な災害の脅威に、全国民が被災県民の苦難をわがことのように心配している。ようやく落ち着きを取り戻しつつある被災者にとって、これから最も必要なことは、生活再建への道筋が明確になり、将来に希望が持てることであろう。
 わが国はこうした自然災害の被災者の生活再建を支援するために、阪神淡路大震災のあと、国民的運動を背景に1998年に「被災者生活再建支援法」を定めた。
 この法律の目的は、経済的理由等によって自立して生活を再建することが困難な住民に対し、「都道府県が相互扶助の観点から拠出した基金を活用して被災者生活再建支援金を支給するための措置を定めることにより、その生活の再建を支援し、もって住民の生活の安定」を図ることである。
 何故、この基金の主管が国でなく都道府県になったのかといえば、「自然災害により個人が被害を受けた場合には、自助努力による回復が原則」という政府首脳の発言に代表される「私有財産形成への公費投入に疑問」の声に配慮したためといわれている。
 しかし、国民は私財から代々租税を国に納入し、国の経済的基盤を支えてきた存在である。国民が拠出してきた税金の中から、国民が自然災害という不可抗力による災厄で私財を失ったときにそれなりの支援を受けることに何ら問題はない、徴税の見返りに自然災害時の支援を約束することは納税の推進という側面もある、という考え方もあり、2400万筆の国民署名を背景に議員立法で成立したのが本法である。これまで義援金に頼っていた被災者生活再建支援が公的な事業の一部となったことは憲法の精神にも合致している。
 さて、現制度では震災などで家を失った被災者には最大300万円の支援金がある。しかしこれで住宅再建は難しいので、現在500万円への増額を求める法改正要求署名も行われており、保団連も支持表明をしている。
 さらには、当面の生活再建に必要な医療や介護の費用をはじめ、家屋解体費用、被災者の生業再建に要する費用、二重ローン問題、被災家庭の子どもの進学のための費用など、国として支援すべき課題が山積している。
 阪神淡路大震災以来の20数年の間にも、鳥取県西部地震、能登半島地震、中越沖地震、東北大震災、長野県北部地震、そして熊本地震と3~4年ごとに大地震に見舞われてきたのがわが国の姿であり、東南海大地震の近未来での発生も不可避とされている。加えて台風被害、豪雨水害、火山噴火災害などの発生もまた現実的脅威である。まさに明日はわが身であり、今こそ抜本的な被災者生活再建支援法の改正、充実が必要な時である。