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【2016.7月号】骨太方針2016にみる医療・介護に国民は希望を持てない

 通常国会が閉幕した翌日の6月2日、「経済財政運営と改革の基本方針2016」、いわゆる骨太方針2016年版が閣議で決定された。副題が~600兆円経済への道筋~とされているアベノミクスのマニュフェスト(憲章)である。
 この内容は、一口で言うと安倍政権が目指す「世界で一番企業が活動しやすい国」をめざす指南書である。ここには国会での議論を尊重する記載は一切なく、経済財政諮問会議とか日本健康会議といった官邸主導の超法規的な方針の筋書きが示されている。
 文書中には次のような表現が繰り返し登場する。 例えば、「『見える化』の徹底」とは民間企業や行政関係者が情報を共有することであり、その典型がレセプトや特定健診の情報を活かした「データヘルス事業」ということになる。
「PPI/PIF手法の活用」とは、行政にとって不効率な事業分野を民間委託、アウトソーシングに切り替え、公共事業への企業進出を促す手法であり、保育事業はもちろん赤字で悩む自治体病院もその例外ではない。「ワイズ・スペンディングの仕組みの強化」とは、政策効果に乏しい歳出から政策効果の高い事業への歳出の付け替えを意味している。すべて企業本位の考え方であって、医療や介護のような社会保障の分野の緊縮財政に使われる手法にほかならない。
 この「骨太方針2016」が医療分野について何を言っているか見てみよう。基本は①医療・介護提供体制の適正化とインセンティブ改革、②公的サービスの産業化、③負担能力に応じた公平な負担と給付の適正化、④診療報酬および医薬品等に係る改革である。
 なかでも力を入れているのが医療・介護の地域差の「見える化」、そして効率的な給付、すなわち「適正化」である。すでに「骨太方針2015」で都道府県医療費の地域差の半減、そのための病床機能の分化(病床削減)と連携の推進(地域包括ケアシステム)、後発医薬品の使用割合目標80%等が打ち出されていることは周知の通りである。
 そしてこの計画の実行のためのインセンティブ改革、すなわちペナルティ付与が出てくるという仕組みなのである。さらにこうした施策の裏付けデータを作るために、レセプトや特定健診のナショナルデータベースを企業に提供することも既定の事実になっている。
 さらに驚くべきことは、各分野ごとの改革の取組の中に、(人生の最終段階における医療の在り方)が盛り込まれたことである。「国民的な議論を踏まえ」といいながら、「医療従事者の育成研修の全国的な実施」との筋書きには、そこまでいうかと怒りを禁じえない。
 財界主導の安倍政権の暴走の中で、われわれ医療関係者はいったいどのような選択肢を探さなければならないか。いや、その前に国の主権者たる国民にはどのような選択が許されているのか、どんな希望が見えているのかをよく考えなければならない。