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【2017.10月号】安倍政権の延命を狙う「隙をつく解散・総選挙」

 北朝鮮の核開発をめぐる国際的対応と核兵器禁止条約の批准をテーマにした国連総会のさ中に、安倍首相は突如解散・総選挙に打って出た。
 ある意味では政略家としての安倍晋三氏が、いかに「機を見るに敏」かを世に知らしめた。最大与党の民進党新執行部のつまづきや、小池東京都知事周辺の不透明な動きに反応しての唐突な解散は、改憲・加憲で一致する自公連合が長期政権を盤石にしたい以外の何物でもないと報じられている。
 言うまでもなく現行の小選挙区制は一票でも多い方が勝ちという選挙法である。生き票より多数の死に票が生まれてしまうことで、投票率にも深刻な影響が出る制度である。定数一人の大統領を選ぶのであれば問題ないが、465人の衆議院議員を選ぶのに、事実上得票の過半数が死票になってしまうのは民主的選挙制度とは言えない。
 小選挙区制を推進する理由の一つにひところ言われた二大政党制も、国民の意向を代表する制度かどうか怪しい。お金のかからない選挙というフレーズも、本当かどうか検証されていない。こうした欠陥だらけの選挙法で圧倒的多数の議席を占めてきた自公政権の下で、加計学園・森友学園・PKO派遣部隊の日報隠し疑惑などが生まれてきた。
 今回の選挙公約で、安倍首相は消費税を10%に引き上げたときに増収分を教育財源に充てるという、使途変更を打ち出すと報じられた。どうやらこれは民進党執行部が考えていた案らしいが、まさに政治的方便そのものである。
 保団連は消費税引き上げに反対しているが、それは逆進性の強い消費税の引き上げが消費性向を抑え、国内の製造業や農林水産業の衰退を促進してGDPを減少させ、医療介護の利用減も引き起こすからである。その一方、輸出関連大企業には全消費税収の3割が使われるという還付金がもたらされ、株主配当金や内部留保に使われてしまうことになる。
 今、消費税が引き上げられたならばデフレ経済はさらに深刻な局面になり、非正規雇用があふれ、実質賃金も減少し、保険料を中心の社会保障財源の確保もできないことになる。
 安倍政権は何のための「隙(すき)をつく解散」に打って出たのか、決して主権者たる多数の国民のためではないことは明らかであろう。自らの宿願である改憲や、ひょっとして祖父岸信介氏が考えていた日本の「核武装」までの道ならしなのであろうか。
 原子力発電を電力のベースロードとすることも公約に入るとみられるが、核保有国以外で唯一、使用済み核燃料の再処理を認められたわが国には大量のプルトニウムが存在している。日本は周辺国から見れば潜在的核保有国になっているのであり、原発再稼働にこだわるのも決して偶然ではないとみるべきなのだ。
 世論調査で安倍内閣の支持率が持ち直している理由は、安倍首相にかわる総理大臣が見当たらないという消極的な理由だと報じられている。そうであるなら、今回の総選挙で安倍政権が思わぬ惨敗をする可能性も条件もあることになる。カギは非安倍勢力と市民の協力が成功するかであろう。