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【2018.3月号】病院医療や在宅医療の確保は国の政策転換で解決せよ

 新診療報酬が決まった。医科点数で見ると今次改定の特徴は、入院では基本部分の評価体系が看護体制と看護必要度等の実績で大幅な組み換えが避けられず、入院患者の選択・選別が一層促進されることになろう。
 外来診療では「オンライン診療」の新規導入、さらに「外来かかりつけ」関連点数の加算の新設で在宅看取り体制への誘導が図られている。その中で保団連が最重点要求の一つとしていた在宅患者訪問診療料の複数医療機関の算定が実現したが、一方で要介護1までの訪問医療点数は引き下げになってしまった。
 このように新点数では評価が割れる問題もあるが、総じて安上がりに、入院から外来(自宅や居住施設)への移動を促す中身であることには変わりない。
 しかし医療の問題では、診療報酬点数では見えてこない大きな隘路がある。それは要介護高齢者の増加に見合う医師や訪問看護師が不足しているという問題である。しかもこれまで訪問診療を行ってきた「かかりつけ医」の高齢化も進んでおり、高齢医が高齢者を診なければならないのが現実となっている。
 では近い将来の病院医療を担う若い医師たちの動向はどうか。今年4月から始まる専門医研修登録を見ても地域枠があるにもかかわらず専攻医一次登録の22.5%が東京一極集中という事態となっている。県内で見ても総合診療科2名を合わせた内科専攻医登録は46名に過ぎず、県内臨床研修病院1施設当たり0.6人、外科に至っては0.1人という深刻な事態になっている。これは10年たっても内科6人、外科1人という人員にしかならないという数字であり、県内の病院の医療はどうなるのであろうか。
 こうした医師体制の中で十分な在宅医療を推進できるとは思えない。年間死亡数予測では2025年には今の20%増の死亡数が見込まれている。増加分は病院病床でなく、在宅や施設で看取る計画のようであるが、果たして可能であろうか。
 すでにわが国は人口減少社会に突入している。65歳以上の高齢者人口のピークは2040年代と予測されるが、このピークまでの20数年はあっという間の時間である。一人暮らしや老老世帯の増加は必定であり、こうした中で医療や介護の従事者をいかに確保するかは、今後の国の在り方に関わる大問題である。
 デフレ経済の中、使い道のない大企業の内部留保を取り崩しながら民生の安定を図る国策に切り替え、老後の安心を確保する年金制度や医療制度を考え出すことこそ、国民の切なる願いではないだろうか。国の将来を医療や介護の面からも考えることができる有能な政治家との対話が今ほど必要な時はない。