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【2022.2月号】新型コロナの新たなフェーズに立ち向かうために

 昨年末からの新型コロナ・オミクロン株(ウイルス変異)への急速な置き換わりが、新たな感染拡大を生じている。とくに若年層への拡大が目立っているが、これはワクチン未接種者の集団でもある。幸いこの変異株の感染では重症化リスクは低いようだが、陽性者数が多くなれば高齢者をはじめ基礎疾患のある人々の脅威にはなってくるのは当然である。季節性インフルエンザの流行でも、基礎疾患のある人が罹患すると基礎疾患の悪化が観察されるのであり、新型コロナ感染では病床ひっ迫の恐れが十分あることになる。
 最近では陽性者数の増加に伴って、新たな課題も目立ってきた。それは「濃厚接触者」の対応である。本年1月14日から、それまで一般的濃厚接触者の外出規制期間が14日から10日になり、医療従事者にとっては無症状の場合は最短6日に短縮される事務連絡(昨年8月の再通知)も出た。その後28日には無症状でかつ抗原検査で陰性ならば5日目の自宅待機の解除が可能との通知を出した。医療現場の責任者の判断で必要な従事者に限って短縮を認めるということであるが、現実にその日数で復帰させるのか、現場の対応は簡単ではない。1月13日までは家族に濃厚接触者をかかえることで、陽性にならなくとも原則20日間、仕事に従事できないことになっていたのである。むしろ陽性になった方が自宅療養7日間で済むといった矛盾も生じていた。2月からは一般の濃厚接触者の場合も7日に短縮されることになったが、この間の医療や介護職場での人手不足は社会的影響が大きかったということであろう。
 なぜ濃厚接触者の隔離が必要なのかといえば、もちろん感染拡大による重症者の増加を防ぎ、病床ひっ迫などの社会的問題を生じさせないためである。
 しかし幸いにも3回目のブースター接種でオミクロン株へのブレークスルー感染への効果が報告されている。3回目の接種が済んだ医療介護従事者の場合は、濃厚接触者であっても感染防止の上で就業を可能としてもよいと思われる。ぜひ国として検討してもらいたい。
 また3回目のブースター接種が遅れているという実態がある。これは10月以降の第5波の収束後の時期に、十分な対応をとらなかったつけが回っているようである。ブースター用ワクチンが十分に供給できるのかどうか情報は明確でなかったことも一因である。当初の12月からの接種開始が遅れた原因を総括して、次の対策の手を打つことが必要であった。
 PCR検査の普及が進むにつれて、市中での検査所の開設が自治体でも検討され、一部では実施がすすんでいるが、まだ現状では発熱外来への依頼が多い。このために日常診療に影響が出ている診療所もある。職場や学校、部活などでの陽性者が見られた場合は、早期にPCR(または抗原定量)検査が必要であり、信頼できる検査所への誘導が望ましい。
 新型コロナ経口薬の情報も不十分である。投与の必要性があるかどうかは保健所ではなく医師の判断に任せ、自治体はその流通を確保すべきであるが、どこまで進んでいるのか情報があまり伝わっていない。
 行政はまん延防止措置に気をとられて、こうした現場の実情に合った対応に遅れをとっているのではないか。今はPCR診断を早期に行い、重症度リスクのある人には早期に内服薬を回し、病床を確保することが求められている。