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【2022.10月号】医薬品の品質管理や備蓄は安全保障の一部である 原薬の国内生産体制を急いで整備すべきだ

 コロナ禍の中で、医療従事者や公衆衛生職員の人員不足に加えて、医薬品の供給不足が目立っている。もちろん量的な不足だけでも重大だが、つい最近も原薬を海外に依存している糖尿病の繁用薬から発がん物質の一つとされるニトロソアミンの混入が明らかになった。こうした問題の同根に、原薬(原末)の海外依存の実態がある。
 2017(平成29)年の厚生労働省の資料では、私たちが日常使う医薬品のうち、すべて海外で製造する割合はジェネリック医薬品については455%、長期収載品(先発品)は50.3%と大きな差はない。しかし輸入原薬の製造国別の統計を見ると、長期収載品では中国は18.9%だが、ついで仏、伊、独、米と続き、6位のインドが8.8%であるのに対し、ジェネリック医薬品では中国は25.8%と4分の1を占め、2位のインドは20.0%、ついで3位が韓国で13.9%とアジア3か国でほぼ6割を占めている。
 こうした状況はコロナ発生前の状況であり、コロナ禍に入って特に中国やインドからの輸入が減少したことが国内の医薬品不足に大きな影響を与えたわけである。
 これまでの国が強調する安全保障といえば、日米の軍事協力による防衛装備品、つまりミサイルや武器弾薬類の強化であった。こうした軍事のみに偏向してきたツケが今になって回ってきたということではないか。これでは将来にも予想される新たなパンデミックに際して国が国民を守ることはできないことは明らかである。
 医薬品産業に限ったことではないが、かつての日本経済の海外競争力の強化とかアベノミスクによる経済成長重視の結果は、日本の基盤となってきた工業生産力の海外移転をもたらした。このことが国内の科学技術開発の停滞や後退の原因とみる識者が多い。
 国内大企業の利益の内部留保は年々増加する一方で、食料や医薬品の海外依存が進行しているという実態は、国民の生活を守るという国の安全保障の基本にとって大きな欠陥である。
 この際、対岸国から見て戦争準備としか見えない防衛予算を大幅に削って、食料自給率の回復をはじめ、医薬品産業の基盤強化、そのための科学技術教育と研究のための予算を大幅に増やすべきである。
 私たちはコロナ禍から国の将来についての教訓を色々得たはずである。この結果、国の政治の方向性が是正されるのであれば、これまでの苦労も癒されるというものであろう。そうでなければ国の未来はないのである。