主張

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【2025.11月号】高すぎる国保料は引き下げなければならない

はじめに
 退職されて社保から国保に移行した患者から「国保って、こんなに高いんですね」と言われた経験をお持ちの会員は多いのではないか。筆者も最初は他人事のように感じていたが、静岡市が2012年に前年比で3割増となる国保料引き上げを強行し全国の政令市でトップの国保料となった事を契機に国保改善運動に携わるようになった。実に所得の2割に迫る「払いたくても払えない国保料」であった。

なぜ国保は高いのか?
 国保がスタートした1961年、加入者の中心は自営業者、農林水産業者であったが、現在は年金生活者、非正規雇用者、無職者等の低所得者が中心となっている。
① 保険料の負担割合が重い
被用者保険(社保)の場合、保険料の半分は事業主が負担するが、一方国保の場合は加入者の全額負担となる。
② 扶養家族の保険料もかかる
被用者保険は収入に応じて保険料が決定される。そして扶養家族がいても保険料は加入者1人分である。一方国保は世帯の所得と、加入者数によって保険料が決まる(1人当たりの均等割と1世帯当たりの平等割)ので扶養家族が多いほど保険料は高額になる。
③ 国保の構造的問題
少し古い数字であるが2017年の厚労省「我が国の医療保険について」によると国保の加入者の平均年齢は52.9歳、一方協会けんぽ加入者は37.5歳と15歳ほど高齢化している。そのため加入者1人当たりの医療費は国保が36.3万円、協会けんぽが17.8万円と倍になっているが、加入者1人当たりの平均所得は国保が86万円、協会けんぽが151万円と半分程度である。つまり国保加入者は高齢で医療費がかかるにもかかわらず所得は低いということになる。
④ 国庫負担(国保会計の国庫負担率)
東京都の場合であるが、1970年56.2%であったものが2012年には21.4%と半分以下になっている。特に医療費総額の45%から35%に引き下げられた1984年の引き下げが顕著であった。

現在の静岡の国保料は
 例えば30歳代夫婦と小学生2人の4人世帯、所得276万円(年収400万円)の場合、静岡市では国保料は年額約37万円、浜松市では約40万円、一方協会けんぽでは約20万円と協会けんぽの2倍である。

国保の改善は
① 国による1兆円の公費投入
これにより均等割、平等割が廃止できる。全国知事会もこれを要請している。
② 県の一般会計からの法定外繰入
国保の都道府県単位化によって生じた市町から県への納付金を引き下げ市町の負担を減らす。
③ 子ども、低所得世帯等の減免制度を県の制度として創設する。
④ 市町では一般会計からの法定外繰入を存続、拡充させ市町独自の減免制度を拡充させる。
「払いたくても払えない」高過ぎる国保料はせめて払えるレベルまで引き下げるべきだ。