【2026.2月号】外来受診患者の減少の背景に何があるか、考えてみませんか
昨年10月に、東京慈恵医大・臨床疫学研究部のグループによる外来患者の受療行動調査で、新型コロナ流行の前、流行期、流行収束期でどう変わったのかという興味深い調査結果が発表された。
この調査は全国約3千人からの回答で、1か月間に外来受診した人は、コロナ流行前の2013年(千人当たり延べ325人)に比べ、2024年には64%程度(千人当たり延べ208人)に減少していることが明らかになったという。新型コロナ流行がほぼ収まっている状況の中、11年の間に国民の受診控えがかなり進んだという結果である。
一方で救急外来の受診はというと、11年前には千人当たり4人だったのが10人と2.5倍になっている。受診せず自宅で様子を見ている間に症状が悪化してやむを得ず救急受診した人は相当増えたわけである。各地の救急診療体制にはそれなりの負荷がかかっているのは当然である。
とにかく最近の外来患者減は診療所の経営にも少なからず影響しているが、一方で病院等の救急外来負担を増やす要因の一つでもあることは間違いない。慈恵医大の研究者は、この結果をコロナパンデミックによる一時的な受診控えの延長ではなく、より長期的な受診行動の変化の可能性があるとみている。問題はその中身であるが、昨年に某民間企業が行った「医療アクセス実態調査」が参考になる。全国の20代~70代の男女1,200名を対象としたインターネットでの調査であるが、体調不良時の「症状認知」「情報収集」「受診」等の受療行動に関わることで困った経験がある人が全体の7割に上ることが判明したという。さらに、自己判断による行動で何らかの悪影響を経験した人も約4割に達し、個人の健康や生活に深刻な影響を与えている実態が明らかなったと分析している。
内容を見ると、インターネット調査のためのバイアスも考えられるが、医療情報の取得方法は「インターネット検索」が55.2%で最多であり、「かかりつけ医」からは26.7%、「テレビ」22.8%、「YouTube」11.1%、「SNS」8.7%など、デジタルメディアからの情報取得も広く行われている。また情報にアクセスしても「情報が多すぎて適切な判断ができない」「調べるほど不安になる」「信頼できる情報の見分けがつかない」といった問題も調査で浮き彫りになっている。さらに、「症状の深刻さがわからない」、「どの診療科・病院を受診すべきかわからない」、「症状の緊急性がわからない」などの回答も少なくないという。
こうした実態を考えると、現在の受診率の低下は単に経済的理由とか、セルフメディケーションの普及と紋切り的に考えることは不適切であろう。
当協会として、国民の医療リテラシーを向上させるためにも健康教室の開催を復活し、40歳以上の健康診断を奨励し、必要な受診や医療相談の機会を保障し、適切な受療行動へ導くことが求められているのではないだろうか。