【2025.12月号】国民負担や低診療報酬にこだわる財務省は社会保障を潰すつもりか
11月5日、財政審の分科会に次期診療報酬の骨格について財務省が提案した内容に、日ごろ政権与党に甘い日医会長がこれまでにない厳しい批判の会見を行った。地域医療の中核を担う病院の経営危機の実態を認めざるを得ない財務省が、「診療所の経営は病院の経営に比べ高い利益率を維持している」として、「病院への重点的な支援のため、診療所の報酬の適正化が不可欠」との判断を示したことに対し、日医や日歯がどう出るか、財務省や政権与党が注目している中での当然の対応であり、強く支持したい。
診療報酬の抑制に執念を燃やす財務省は、一貫して社会保障の充実に背を向け、国民に対しては「医者は儲かっている」、「高齢者や高い医療費を使っている患者が保険財政の金喰い虫」といった誤った印象を与えることに集中してきた。国民の生活がなぜ楽になってこないか、手取りが増えないのは社会保険料の増が原因なのか、本当の理由はどこにあるのか、我々としても財務省の宣伝に惑わされない必要がある。
著名な金融経済アナリストである河野龍太郎氏によると、この25年、日本の企業の売り上げは18%も伸びており、株主配当は8倍になり(株価も上がり)、企業利益は5倍になっており、日本経済全体でみれば労働生産性も先進諸国なみに向上しているという事実を指摘している。問題はこの間の人件費率の伸びが8%(年率にすると0.3%)に過ぎないという労働分配率の抑制構造にあるという。
なぜ人件費が伸びなかったのか、本来人件費に回すべき経費が企業利潤の内部留保にまわり、マクロ経済学的に言えば家計から企業への所得移転という逆現象が生じていることが問題であり、結局消費も増えず、消費が伸びないから国内の投資が出来ず、海外に資金流出が起きるというのが河野氏の判断であり、企業が利潤をあげ内部留保が増えても人件費が抑えられているので生活は楽にならないのであり、この分析に特に異論を唱える人はいないようである。
さらにいえば、人件費が抑えられている理由はベースアップがゼロベース(定期昇給だけ)、人が必要でも社会保険料が不要な非正規雇用が主となり、更に消費も落ちるという悪循環になっているのである。河野氏は、日本の経営者や政治家も社会保障に関心が低く、労働組合側の賃上げ要求も弱いことも一因としてみているようである。
こうしてみると社会保障の充実に必要な原資が国税収入の増であり、法人所得税や企業利益(資本)の内部留保に手を付けるような新たな財源調達がなされるべきことは明らかなのであるが、財務省も厚労省も「持続可能な社会保険制度」のための財源を企業に求めるのではなく、国民の財布に求めようとしているのである。
医療保険制度の健全な維持のために必要なことは、医療も介護も社会保障制度であり、その財源は個人の社会保険料の負担増ではなく国税収入に求めるという基本にたち返ることであろう。
保団連・保険医協会はこれまでも国民的社会運動として、社会保障や医療保険制度の改善を求める活動を続けてきたが、診療報酬の改善を目指して今後も引き続き会員の皆様の賛同をお願いするものである。