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【2013.11月号】不可解な中部電力の浜岡再稼働の論理

 中部電力が現在停止中の浜岡原発4号機の再稼働に向け、原子力規制委員会の安全審査を申請する方針を明らかにした。
 福島原発事故の収束も見えない今、浜岡を再稼働しなければならない理由はいったい何なのか。報道によると、浜岡原発全炉停止で経営が悪化しており、火力燃料費の高騰で電気料を値上げせざるを得ないから早期に原発を再稼働させたいという「経営上の理由」のようだが、許されない論理だ。
 そもそも福島原発事故のあと、当時の菅内閣が浜岡を停止した理由は何だったのか。それは浜岡原発にメルトダウン事故がおこれば、静岡県内の被災どころの話ではなく、その影響は人口数千万を超える首都圏に及び、新幹線や2本の高速道の使用停止で国の経済全体の打撃になること、しかもその可能性は東南海地震の震源域にあるという現実から高い、という理由であったはずだ。
 そうした国家の存続にかかわる運転停止という判断が、一電力会社の「経営上の理由」で簡単に再稼働になってしまっていいのか、という問題なのである。これでは「国破れて企業あり」以外の何ものでもない。
 われわれ国民は、国の将来のため、国民の安全を最優先することであれば、正当な電気料の値上げを拒否するほど愚かではない。もちろん自然エネルギーの開発や石油にかわる天然ガス資源の効率的な利用への期待もある。
 中部電力は上越火力発電所の技術革新によって、効率的な大規模天然ガス発電への道も歩み始めている。これはすばらしい成果であり、シェールガスやメタンハイドレートの国際的開発がますます進み、発電設備の技術革新と相まって低CO2排出、燃料費の低減化も見通しがあるといわれている。
 こうした火力発電の新エネルギー開発の一方で、見通しが立たない福島原発の現状を目の当たりにしながら、浜岡再稼働を画策するとは全く理解不能である。原発再稼働こそ経営破綻への道なのである。
 中部電力が企業として生きるためにも、選択すべき道は原発からの撤退でしかない。使用済み核燃料の再処理の見通しもなく、放射性廃棄物の安全な管理方法さえ見つからない現実をみれば、小泉元首相ならずとも分かる話である。
 中部電力に浜岡原発再稼働を断念させ、廃炉を決断させて新火力や自然エネルギー開発に向かわせる県民運動を一層強化しなければならない。