【2025.6月号】生活習慣病管理料算定の「厳格化」は容認できない
4月23日に開催された財政制度等審議会・財政制度分科会に、財務省が社会保障制度改革に関する資料を提出し、その中で生活習慣病管理料の算定要件を厳しくすることを提案した。まだ実施1年にも満たない中で、しかも財政制度分科会という場での無謀な提案であることに強い怒りを覚える。改革の方向性(案)に示された内容は、欧州などでの疾患ガイドラインを例に、病状が安定してきた患者へのフォローアップでの算定用件を月1回の算定より長くするというものである。「厳格化」とは、「疾患ガイドライン」に沿った診療を半ば強制する内容なのである。
日常診療では、高血圧や脂質異常症での管理で、長期処方が増えてきていることは事実であろう。それはガイドラインに書かれているからではなく、医師が患者の疾患理解の程度や血圧測定の状況、脂質値の推移などを見ている結果としての医学的判断であり、2か月か3か月に1回の通院(算定)患者も少なくない。
しかし財務省の「厳格化」とは、「疾患ガイドライン」に沿った診療の強制そのものになる可能性が強い。同じ「生活習慣病」であっても患者の病状や生活実態は多種多様であり、高齢化がすすむなかで医学管理上の個人差の拡大は避けられない。場合によっては週単位の通院が必要になるケースも稀ではない。ガイドラインはあくまで標準的な基準なのである。
今回の案は社会保障費や医療費の削減を至上命題としている官僚が捻り出したものであろうが、軽視できない提案である。わが国の保険診療は療養担当規則に加えて診療ガイドラインの枠にはめられることになってしまう恐れがあり、こうした財務省ペースの「改革」はとても容認できないものである。
人材紹介会社の手数料に上限規制を設けよ
今回の財政制度分科会に出された資料に人材紹介会社の規制強化が盛り込まれた。この問題はすでに医療経済実態調査でも問題視されていたが、これまで医療機関いじめばかりしてきた財務省がとりあげたことは遅きに失しているものの歓迎したい。今回の資料を見て、紹介手数料が各職種とも平均年収の20%にもなっていることも驚きだったが、この手数料が令和3年から4年にかけて20%の伸び率になっていることにさらに驚いた。
医療機関も近年の物価高騰で人件費に回す原資にも事欠く事態であるが、中でも紹介手数料の伸び率は異常である。財務省はこうした紹介手数料の増加が医療機関の経営圧迫の一大要因となっていることを踏まえ、上限規制を設けることと同時に、本来のハローワークや職能団体の紹介事業の支援に力を注ぐべきである。