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【2025.7月号】資格確認書は渋谷区・世田谷区のように後期高齢者以外に国保加入者にも全員交付を

後期高齢者に1年間全員交付

 厚労省は4月3日、75歳以上の後期高齢者全員に対してマイナ保険証保有の有無にかかわらず資格確認書を交付する方針を審議会に提案し了承されました。ただ2025年8月から1年間の暫定的な対応としています。後期高齢者でマイナ保険証を保有している人は約1,300万人、非保有者は約700万人ですので約2,000万人全てに1年間資格確認書が交付されることになります。2024年12月の85歳以上のマイナ保険証利用率は17.2%と年齢別では明らかに低い水準のため、今年7月末等で現行保険証の期限を迎えるこのタイミングで資格確認書の申請が殺到し市町村の窓口が混乱するのを防ぐことがこの全員交付の目的とされています。

渋谷区・世田谷区の対応

 東京都の渋谷区・世田谷区では、後期高齢者のみならず国保加入者の全てに資格確認書を送付する方針を打ち出しました。全国で初めての対応とみられています。これは現行の国保保険証の有効期限(共に9月30日まで)前に資格確認書の申請が後期高齢者と同様に殺到し窓口での業務に混乱が生じることが防ぐためとされています。つまり国保加入者にも同じ混乱が予想させるという当然の見解に基づいています。ところが厚労省はこの動きに「方針に反する対応だ」と批判を行い何等かの「ペナルティ」も示唆しています。

静岡県の対応
 保険医協会も団体加入している静岡県社会保障推進協議会(県社保協)は、6月静岡県国保課に対して「国保加入者全員に資格確認書の交付を求める要請書」の受け取りを依頼すると、担当者は「(文書は)受け取れない。県内で資格確認書の書式は統一したが、市町に対して指導する立場にはない。国の方針に基づいて実施するだけ。現時点で(資格確認書を)一律に送る市町は把握していない「(渋谷区と世田谷区の対応を伝えると)渋谷区・世田谷区は国に則していない」というような対応でした。

望ましいのは

 静岡県内では後期高齢者、国保共に7月31日に現行保険証の有効期限が終了します。後期高齢者のみならず国保の方の資格確認書申請で市町の窓口は混乱が予想されます。同時に医療現場でも起こりうるでしょう。混乱は後期高齢者、市町国保だけに限定される問題ではないでしょう。国保組合や社会保険等の全ての健康保険で一律に資格確認書を交付すべきです。であるならば健康保険証を存続させれば無駄な経費や人的負担も抑えられます。当面の間、健康保険証を復活させてマイナ保険証と共存させていくべきです。そのためにも、保険証復活への足掛かりの第一歩ともなりえる資格確認書全員交付の英断を行った渋谷区・世田谷区の動きは注目に値します。この動きが全国に広がることを期待します。