【2025.9月号】「期限切れ保険証でも来年3月まで診療」の事務連絡 保険証を残せばすむこと
事務連絡
6月27日、厚労省は「健康保険証の有効期限切れに伴う暫定的な取扱い」の事務連絡(疑義解釈)を発出した。これは8月1日以降、多くの自治体で国保の保険証の有効期限が切れ順次失効していき、また新規の保険証も発行されないことにより、有効期限の切れた保険証を引き続き持参する患者が多発するであろうという予測に基づくものである。
事務連絡では、このような場合に10割の負担を求めるのではなく被保険者番号等によりオン資システムで資格情報を照合した上で3割等の一定負担割合を患者に求めてレセプト請求を行う対応を2026年3月末までの暫定的な移行期の対応としている。
問題は
事務連絡は「保険医療機関等から患者に対し、次回以降はマイナ保険証又は資格確認書を持参いただくよう働きかけることについて御協力いただきたい」と最後に結んでいる。また、6月5日に保団連が埼玉協会とともに行ったレクチャーでは、医療機関のスタッフ等が患者に対して、目視モードやマイナ保険証の有効期限切れについての説明、患者のカードリーダー操作を支援する等の対応は「医療機関の責務ではない」との厚労省の「見解」が明言された。
実際、医療機関の受付では、オン資、マイナ保険証関係での患者への説明やサポートや苦情対応等の「本来の業務以外の業務」で混乱している。確かに、これらの業務は6月5日の「見解」では医療機関の責務でないことが明確になったが、だからといってこれらの対応をしないで済むのか?円滑な保険診療のためには、たとえ責務でなくとも行わざるを得ないのが実態であろう。つまり、責務でないことを「御協力いただきたい」と押し付けることが問題である。そもそもマイナ保険証のベースとなるマイナンバーカード自体の取得は任意である。任意であるものを利用した制度を実質義務化し、その運用を医療機関に押し付けることは大問題である。また、期限切れのものを有効と見立てる行為自体、乱暴な論理である。そもそも保険証を廃止しなければ発生しない問題である。