【2026.6月号】地域基幹病院の経営困難を乗り切るためには議会の熱意と住民のパワーが必要
去る4月24日、難波静岡市長が記者会見で、市立清水病院の赤字対策として、清水厚生病院と一体的な運用を図るため、指定管理者制度を予定するとの表明を行った。公営病院の経営問題は静岡市清水区のローカルな問題に限らない。県内にも県立の4病院を除いて自治体立の病院が18病院あり、そのすべてが地域医療の基幹病院を担っているわけだが、うち伊東市民病院は自治医大系の「地域医療振興協会」が、榛原総合病院は「医療法人・徳洲会」が指定管理者になって運営されている。
公立病院がなぜ赤字問題を抱えやすいのか。コロナ禍以降、全国の自治体病院の経営実態は2024年度の全自病(全国自治体病院協議会)の統計で9割を超える病院が医業収支の赤字で苦しんでいる実態がある。一体化運営の対象である清水厚生病院はJA全国厚生連の病院だが、その厚生連でも84%の病院が赤字と報告されている(M3の報道による)。一体化すれば問題解決とはいえない状況であろう。
公立病院の運営には、救急医療、小児や周産期医療などの政策医療(いわゆる不採算医療)を担うとの性格から自治体からの補助金(税金)の投入が認められているが、それだけが経営困難の原因ではない。まず患者数が少子高齢化の影響で減少傾向にある。高齢化なら患者が増えるはずという見方は実態からみれば逆であり、高齢化が進むほど通院できない患者や施設入所者が増える。
さらにすべての病院統計が示す問題として人手不足がある。看護師が不足することで病棟が閉鎖され、常勤医師の退職や供給不足で診療科も減る。職員不足でハローワークがあてにならず派遣会社への紹介手数料が増える。また医療DXの促進でIT関係の費用が激増、加えて水道光熱費の経費増があり、人件費アップを抑えても数%程度の診療報酬増では焼け石に水、赤字は当然である。
以上は基盤的経費の増加による経営問題なので、病院収入の基本となる診療報酬の適正な引き上げが国に求められるが、それを押し上げるのが最も影響を受ける地域住民やその代表者である議会や首長の政治的パワーである。こういう人々が厚労省や国会議員会館に大挙して押しかけてこそ道が開けよう。
さらに忘れてならないのは医療に特有のソフトパワーの構築である。そのためには勤務医の熱意を引き出し、保険診療に精通し、多職種の連携を促し、患者管理や患者増に通じる医療行為の質的転換を促す人材の養成がポイントである。徳洲会のような民間法人が患者に支持され病院経営に成功しているとすれば、そのソフトパワーの構築があるか無いかの違いであろう。
清水病院の患者調査を見ると、患者の半数は地域の開業医の紹介である。それだけ地域から信頼されている病院であればそう簡単に潰れるはずはない。開業保険医としても地域医療のかなめである公立病院の実情に関心を払い、住民の利用度を高めるような支援を強めていきたいと思う。